NXTR
開発プロジェクト

新製品のNXTR(ネクストアール)は、電子部品の補給、次生産への段取り替えまで完全自動で行う電子部品実装ロボットである。かねてよりスマートファクトリー化に向けた製品開発に力を入れてきたFUJIにとっても、未知の領域への挑戦となった。

  • 杉田 寛佳 機械設計 2012年入社

    ロボットソリューション事業本部
    NXTRプロジェクト

    杉田 寛佳

    機械設計
    2012年入社

  • 山蔭 勇介 プロジェクトリーダー・機械設計 2003年入社

    ロボットソリューション事業本部
    NXTRプロジェクト

    山蔭 勇介

    プロジェクトリーダー・機械設計
    2003年入社

  • 坂口 晴哉 ソフト設計 2019年入社

    ロボットソリューション事業本部
    NXTRプロジェクト

    坂口 晴哉

    ソフト設計
    2019年入社

  • 斎藤 雄介 制御設計 2011年入社

    ロボットソリューション事業本部
    NXTRプロジェクト

    斎藤 雄介

    制御設計
    2011年入社

Story.01

省人化を実現するため、
前例のない製品づくりに挑む。

少子高齢化や労働人口の減少の影響により、産業社会全体に人手不足の波が押し寄せている。特に製造業界においてこの問題は深刻で、省人化の取り組みは必要不可欠となるだろう。FUJIではかねてよりスマートファクトリー化に向けた製品開発に力を入れてきた。IoT技術を駆使し工場内の設備のデータを見える化・自動化するのがスマートファクトリーであり、製造工程の最適化によって省人化を実現する試みだ。

NXTRの開発が本格的にスタートしたのは2016年のこと。機械技術部・制御技術部・ソフト技術部の精鋭メンバーが、部署の垣根を越えてプロジェクトに名を連ねた。NXTRはFUJIの主力製品である電子部品実装ロボット・NXTを進化させたハイエンドモデルだ。電子部品の実装(プリント基板に電子部品を装着し、電子回路を作成すること)は以前から自動化されていたが、今回のモデルでは電子部品の補給、次生産への段取り替えまで完全自動で行う。これは世界で初めての試みだった。

立ち上げ当初よりプロジェクトに加わり、リーダーとしてチームを率いる山蔭は、「お客様に感動を与えるためには、お客様が想定していることを100%やってもまだ足りない。お客様の想像を超えていこう」とメンバーを鼓舞し、前例のない製品づくりに挑んだ。

Story.01 省人化を実現するため、前例のない製品づくりに挑む。

Story.02

チームの
一体感を高め、
スピード意識を
改革する。

知識やスキルを一箇所に集中できるのはプロジェクト化のメリットだが、実際には異なる職種が集まるため混乱も生じる。それまでと同じやり方でうまくいかないことは当然あり、逆にいえば、同じやり方の踏襲ではまったく意味がない。実質的な業務内容は変わらないものの、プロジェクト化による変革が必要だと、山蔭は痛感していた。

特に重視したのは、メンバー全員が同じ熱量で仕事に向き合うことだ。それぞれが違う方向を向いていたり、意識に温度差があったりしては、プロジェクトは絶対に成功しない。山蔭は積極的にメンバーとコミュニケーションを図り、各自に合った方法でモチベートしながら、チームの一体感を高めていった。

制御設計を担当する斎藤は、「プロジェクト化で物理的にも心理的にも距離が近くなり、意見交換をしやすくなった」と語る。もちろんメールやチャットツールでのやりとりもあるが、直接話したほうが認識の齟齬は発生しにくい。これによりメンバー間の連携が強化され、仕事の質は格段に上がった。

また、山蔭はスピード意識改革にも取り組んだ。承認作業の工程を簡略化し、まずは自分自身が即断即決、即行動の姿勢を貫く。「ミスを怖がって慎重になりすぎちゃいけない。ミスはしてもいいから、まず動いてみよう」。そこには、PDCAサイクルを早く回すことでチャレンジの機会を増やす狙いがあった。

Story.02 チームの一体感を高め、スピード意識を改革する。

Story.03

NXTRの存在意義を
改めて認識することになる。

NXTRは「3つのゼロ」をコンセプトに掲げている。まず、 実装不良ゼロ。常時センサーが電子部品と基板の状態を確認することで、適正な実装を実現し品質を担保する。次に、オペレータゼロ。電子部品の補給、次生産への段取り替えまで完全自動で行うため、オペレータの配置は不要だ。これにより、人的ミスに起因する作業の中断や遅れを一掃する。最後に、機械停止ゼロ。ヘッドなどのユニット交換を工具なしで行うことができるため、オフラインでのメンテナンスが可能となるほか、自己診断機能による予知保全で、生産計画に支障を与える突然の機械停止を防ぐ。

社内のデザインレビューを経て、FUJIは2019年5月のプレスリリースにてNXTRの開発を発表した。同年6月には、東京ビッグサイトで開催される実装プロセステクノロジーにも出展されたが、折悪く新型コロナウイルス感染症が世界を席巻。NXTRを製造するための部品調達がままならず、結果的に正式リリースの時期を逸してしまう。製品開発においてリスクマネジメントを徹底するプロジェクトメンバーにとっても、これは想定外の出来事だった。ただ、コロナ禍の影響でオペレータが入室できないために多くの工場が操業を停止するなか、NXTRの存在意義を改めて認識することにもなった。

Story.04

顧客の生の声を吸い上げ、
ブラッシュアップの作業を進める。

2022年春、ようやく拡販の目処がつき、NXTRが顧客のもとに納品された。反応は上々だ。ここから顧客の生の声を吸い上げ、ブラッシュアップの作業を進めていくことになる。競争力高めるためのコストダウンや追加機能開発も行わなければならない。山蔭はチームの結束力強化とスピード意識改革に、さらに熱を込めた。

機械設計として入社時からプロジェクトに参画する杉田は現在、部品補給自動化の鍵となる、ユニットを移動させるロボットの設計に携わっている。他部署と連携し、移動速度を上げる方法などを議論し、そこで出たアイデアをもとにテストを実施。自分のチャレンジを盛り込んだ設計を心がけながら、日々ロボットの性能向上に努めている。

ソフトウェア設計を担う坂口もまた、新機能を導入する際には、機械や制御の領域にまで踏み込んで議論に加わった。アプリケーションは装置内だけではなく、上位側のシステムとも連携する。その組み合わせを把握しておかないと不具合につながるため、情報収集には余念がない。「3つのゼロ」は大前提として、より高性能、高品質な製品となるよう、継続的に改善を繰り返す。

そう、プロジェクトはまだ終わっていない。むしろ始まったばかりなのだ。

Story.04 顧客の生の声を吸い上げ、ブラッシュアップの作業を進める。
Story.04 顧客の生の声を吸い上げ、ブラッシュアップの作業を進める。
Story.04 顧客の生の声を吸い上げ、ブラッシュアップの作業を進める。

プロジェクトの今後Future of the Project

現在NXTRは、世界最高水準のスループット(1時間当たりに何個の部品を搭載できるかの指標)60,000CPHを誇る。しかし、技術の進化は日進月歩。一度世に出た製品であっても、顧客の要望を反映して機能をアップデートし、付加価値を高めていかなければ、競合に敗れ、いずれ見放されてしまう。

NXTRの市場シェアを拡大すること、そして、同機をFUJIの新たな主力商品となるよう育てることが当面の目標だ。今回、電子部品の補給と次生産への段取り替えまでは自動化されたが、製造工程において人の手が必要な作業はまだ残っている。伸びしろがある、と言い換えてもいい。省人化の先にある無人化を目指し、プロジェクトメンバーの挑戦はこれからも続く。