innovative story

FUJIの競争力を支えるコア技術 ―高速・高精度のその先を見据えた開発センターの技術開発

Vision
株式会社FUJI 上席執行役員 開発センター長
藤田 政利
1997年、富士機械製造株式会社(現株式会社FUJI)に入社。以来、長年にわたり電子部品実装ロボットの高速・高精度を実現する技術開発を担う。
リニアモーターの開発、制御アルゴリズムの構築、CAE活用など、NXTシリーズをはじめとする電子部品実装ロボットの開発において、要素技術開発や統合設計技術の高度化に注力。
2021年より開発センター長に就任。FUJIのコア技術開発を統括している。
目次

スマートフォンから最先端のAIサーバーに至るまで、半導体や電子部品の微細化・高密度化は急速に進んでいます。電子部品実装ロボットの領域において、FUJIが競争力を維持し続けるためには、市場のニーズを先取りした高度な技術開発が不可欠です。

開発センターは、FUJIの競争力の源泉となるコア技術の開発を目的とした組織です。同センターが推進する最先端の開発戦略や、2003年販売開始の「NXT」シリーズの設計にて採用された革新的な設計思想である「モジュールコンセプト」誕生の裏側、そして世界一を追求し続けるエンジニアたちの挑戦の軌跡について、開発センター長の藤田 政利さんに話を聞きました。

開発センターが担うミッション 「縦横2軸」のさらなる強化

開発センターが担うミッションの全体像について教えてください。

開発センターが担う最大のミッションは、「FUJIの競争力の源泉となるコア技術を自社で構築し、製品の性能向上にダイレクトに直結させる」ことにあります。FUJIの製品には極めて高い性能が要求されるため、必要に応じて自らの手で高度な技術をゼロからつくり上げることが不可欠です。

先進技術を事業部にて製品化して取り込んでもらうために、製品化に先行してコア技術そのものの開発に取り組んでいます。

開発センターが考えるコア技術の開発には、2つの軸が存在します。1つは、お客様が価値と感じるロボットの生産能力に直結する「位置決め精度」と「速度」をどこまでも極めていく、コア技術の深化です。これは言わば「縦の軸」で、ベースとなるコア技術が圧倒的に強ければ、どのような製品ラインナップを展開しても、全体の性能を底上げすることができます。そしてもう1つが「横の軸」の拡大で、お客様の多様なご要望に対応するために、技術のバリエーションを広げていくことです。この縦と横の軸を絶えずブラッシュアップしていくことで、変化の激しい市場においても、FUJIの技術的優位性を揺るぎないものにできると考えています。

「無いものは自らつくる」 高速・高精度を実現したリニアモーター開発

FUJIのコア技術の一つであるリニアモーターについて教えてください。

FUJIの主力製品である電子部品実装ロボットにおいて、最も重要な性能指標の一つが「速度(生産性)」です。部品を吸着し、基板上に正確かつ高速に配置する動作は、非常にシンプルだからこそ、速度の追求がダイレクトにお客様の利益に繋がります。

その後のフラッグシップとなる「NXT」シリーズの立ち上げから、私もエンジニアとして開発プロジェクトに携わっていました。初期の「NXT」ではボールねじが採用されていましたが、競合に打ち勝つためにはリニアモーターの採用は不可欠でした。しかし、私たちが目指していた速度を実現しようとしたとき、世界中のメーカーを探しても、求めるスペックを満たすリニアモーターは存在しなかったのです。

「世の中に存在しないのであれば、自分たちの手でつくりだすしかない」――。そこからすぐに自社開発が始まり、装置の限られたスペース内にしっかりと収まるサイズを維持しながら、超高速移動を可能にする推力を開発メンバーが徹底的に追求し、電子部品実装ロボット専用のリニアモーターを開発しました。リニアモーターのコア技術を自社内で確立できたからこそ、その後、様々な製品に展開することが可能となり、FUJIの歴史の中での大きなブレイクスルーとなりました。

電子部品実装ロボット向けに専用開発した高推力シャフトリニアモーター

お客様の生産現場を変えた「モジュールコンセプト」という革新

NXTシリーズの象徴ともいえる「モジュールコンセプト」は、どのような発想から生まれたのでしょうか。

また、前述したNXTシリーズの根幹を成すのが、当時の先見の明を持ったリーダーたちが提案した「モジュールコンセプト」という画期的な発想です。

これは、お客様が製造する製品の変更(例えばスマートフォンからノートパソコンへの移行など)に合わせて、生産現場で装置内のユニットを組み替えられる仕組みです。これにより、多品種生産が可能になった上、面積当たりの生産性も向上するというメリットをお客様に提供することができ、結果としてFUJIがグローバル市場で広く認められる契機となりました。

しかし、このモジュールコンセプトの実現には、大きな技術的課題がありました。コンパクトで交換可能なモジュールにするためには、モジュール幅を狭く設計する必要があります。しかし、幅を狭くするとモジュールの横揺れが発生しやすくなり、ロボットの位置決め精度に影響を及ぼします。さらに、ユニットを容易に交換できる構造にすると、結合部の剛性確保も難しくなり、高速・高精度な動作性能を両立することが大きな課題となったのです。

この大きな課題に対し、私たちは全社一丸となって技術開発に取り組みました。入れ替えやすさと剛性をいかに両立させるかという難問をクリアし、モジュール構造でありながら超高速・超高精度を実現するNXTシリーズを生み出したのです。このイノベーションが評価され、平成30年には「第50回 市村産業賞」という栄えある賞を受賞することができました。FUJIのエンジニアたちが積み重ねてきた技術開発の成果が、一つの形として認められた出来事であったと感じています。

FUJIの電子部品実装ロボットは、長年にわたり世界トップクラスのシェアを維持し続けています。これは誇らしいことであると同時に、エンジニアにとっては大きなプレッシャーでもあります。なぜなら、お客様や市場からの期待値が非常に高く、「FUJIならできて当然だ」という視線が常に向けられているからです。

このような環境下で、エンジニアたちの間には自然と「他社と同じ性能のものをつくっても意味がない」という意識が生まれています。現状維持は衰退と同じであり、これまでに無い新たな付加価値を提案し続けなければならないという、良い意味での義務感や責任感、そして期待に応えたいという強い熱意が社内中に満ちています。

こういった意識は周りから強制されるものではなく、展示会などで他社との違いを肌で感じ、またお客様の現場をお伺いする中で培われるものです。そして何よりも、周囲の先輩や上司たちが常に高い志を持ってものづくりに向き合っているからこそ、若手エンジニアにも挑戦意欲のDNAが自然と引き継がれているのだと感じます。

お客様の想像を超える、次代のものづくりへ

これからのものづくりにおいて、開発センターが目指している技術開発の方向性について教えてください。

私たちがものづくりにおいて大切にしているのは、「お客様の想像を超える価値を提供する」ということです。お客様が求めている仕様を満たすだけでは、本当の意味での競争力にはなりません。お客様自身もまだ気づいていない潜在的な課題やニーズを先回りして捉え、それに対する解決策を技術として形にしていくことが重要だと考えています。

FUJIのモジュールコンセプトや自動化技術も、単なる性能向上ではなく、「生産現場全体をどう進化させるか」という視点から生まれたものでした。高速・高精度を追求するだけではなく、お客様の生産性や柔軟性、将来のものづくりまで見据えて技術開発を進めてきたことが、現在の競争力につながっていると感じています。

現在、AI活用や半導体後工程の進化により、電子部品実装ロボットに求められる技術水準はさらに高度化しています。こうした変化に対応するためには、既存技術の延長線上だけではなく、新しい原理や新たな要素技術への挑戦が不可欠です。

開発センターは、これからもコア技術を磨き続けると同時に、AIや先進技術を積極的に取り込みながら、次代のものづくりを支える技術開発に取り組んでいきます。

この記事をシェア