
製造業におけるマーケティングは、単なる広告や販促活動に留まりません。製品開発、営業支援、さらには導入後の活用支援まで含めて、お客様への一貫した価値提供を設計する役割へと進化しています。株式会社FUJIでは、2026年4月にマーケティング部を独立組織として新設し、「価値企画」「第一想起」「顧客体験」「営業支援」という4つの軸を中心に、独自のマーケティング戦略を推進しています。約70名規模の組織には、元設計者や技術サポートの経験を持つメンバーも所属し、現場に深く入り込む“製造業ならではのマーケティング”を展開しています。今回は、元設計者から営業技術経験者まで多様な人材をまとめるマーケティング部長の増田 泰章さんに、FUJIが目指すマーケティングの在り方と、世界市場を見据えた成長戦略について話を伺いました。
FUJI独自のマーケティング戦略、その全体像に迫る
これまでFUJIでは、マーケティング機能は営業企画部門の一部として存在していました。そうした中、2026年4月にマーケティング部として独立し、改めて「自分たちは何を担うべきか」を整理した結果、「価値企画」「第一想起」「顧客体験」「営業支援」という4つの軸にたどり着きました。
価値企画では、お客様にどんな価値を届けるべきかを考えます。単に製品を作るのではなく、「なぜその価値が必要なのか」を深く掘り下げる役割です。第一想起は、お客様が設備投資を検討した際に、真っ先にFUJIを思い浮かべてもらうための活動です。設備投資のタイミングを予測することは難しいですが、いざ検討が始まった時に頭の中にFUJIが存在している状態を作る必要があります。
顧客体験では、装置導入後にお客様が最大限活用できる環境づくりを行っています。例えば、わかりやすいマニュアルや会員サイトの整備、必要な情報へすぐアクセスできる導線づくりなどもマーケティングの重要な役割だと考えています。そして営業支援では、営業と開発の橋渡し役として、提案資料の整備や技術情報の共有を進めています。
お客様の声を価値へ変える、“価値企画”の仕組みとは
現在、特に力を入れているのが「VOC : Voice of Customer」の仕組みです。営業担当者がお客様から受け取った声をデータとして蓄積し、定期的な検討委員会で議論しています。以前は、件数の少ない要望については、どうしても埋もれてしまうことがありました。しかし今は、すべての要望を蓄積して定期的に検討する仕組みが確立されていますので、1回では採用されなかった要望でも、2回、3回と同じ声が上がれば、再び検討対象となります。そうした積み重ねによって、本当に市場が求めているものを見極めています。
また、私たちが重視しているのは、「お客様が求めていて、FUJIだからこそ提供できる価値」を見つけることです。そこがFUJIの強みとなり、お客様に喜んでいただけることにつながると考えています。お客様が本当に求めている価値を理解し、先回りして提供することを常に意識しています。
技術と営業をつなぐ、FUJIならではの営業支援
FUJIのマーケティング部には、元設計者など専門知識を持ったメンバーが数多く所属しています。例えばソフトウェア提案では、営業担当だけでは説明が難しい場面もありますが、技術に精通したメンバーが同行することで、お客様との議論が深まり、理解度や納得感が大きく高まります。
実際に、ソフトウェアライセンスの活用方法について、営業担当だけでは十分伝えきれなかった案件で、専門知識を持ったメンバーが現場に同行し、「この現場にはこのライセンスが適している」「こう使えば生産性が向上する」と具体的に提案したことで、大きな成果につながったケースもあります。
また、導入後のKAIZENも重要な役割です。お客様の現場へ訪問し、電子部品実装ロボットが本当に高い稼働率で運用できているかを確認しながら、より良い使い方を提案しています。さらに「CTA(サイクルタイムアナリシス)」という取り組みでは、電子部品実装ロボットが最も効率よく稼働するプログラムになっているかまで診断しています。
単に製品を売るだけではなく、「FUJIを選んでよかった」と感じていただくところまで支援する。それが私たちの考えるマーケティングです。

グローバル市場で存在感を高める、デジタル発信戦略
現在は、グローバルメディア課を中心に、海外向け情報発信を強化しています。成功事例動画やプレスリリース、SNS運用などを通じて、世界中のお客様へFUJIの価値を届けています。
特に、FUJIは海外売上高比率が非常に高いため、地域や用途に合わせて情報媒体を使い分けています。重要なのは、「設備投資を考えた時に、まずFUJIを思い出してもらうこと」です。そのために、継続的な情報発信を続けています。
また、各国の代理店とも連携し、日本での成功事例や展示コンセプトを海外にも展開しています。その結果、2025年度には約200社の新規顧客との取引を開始することができました。各国代理店との連携強化や、継続的な情報発信の活動が成果につながったと感じています。地域によって課題は異なりますが、現地へ足を運ぶことで、多くの気づきが得られています。
“体験”によって伝える、FUJIの製品の魅力
実際に製品を見て、触れていただくことは非常に大切です。FUJIの製品は、コンパクトさや使いやすさ、自動化技術に強みがありますが、それはカタログだけではなかなか伝わりません。展示会やショールームで実際に体験していただくことで、その価値をより深く理解していただけます。
その効果を実感した事例の一つが、先日の展示会です。現在実用化されている最小規格をさらに下回る次世代極小電子部品「016008M(0.16×0.08mm)」の基板実装に世界で初めて成功した技術を展示したところ、大きな反響をいただきました。展示会に先立ち、プレスリリースを通じて情報発信を行ったことや展示会場での見せ方の工夫なども、関心を高める要因になったと感じています。優れた技術を社会へ届けるために、成果そのものだけでなく、「どのように発信するか」という戦略も極めて重要であることを改めて実感しました。
“マーケティングで業界ナンバーワン”へ――FUJIの次なる挑戦
私たちは「マーケティングで業界ナンバーワン」を目指しています。単なる販促活動ではなく、お客様の声を集め、価値を企画し、開発と連携しながら市場へ届ける。その全体を設計するのがマーケティングの役割だと考えています。
製造業のマーケティングは、データだけを見ていてもうまくいきません。実際に現場へ行き、お客様を知り、競合を知り、その先を考えることが重要です。だからこそ、FUJIのマーケティングは、“現場に足を運ぶマーケティング”なのです。
また、FUJIの技術者が開発した優れた技術を、どのように世の中へ届けるかを考えることも重要な役割です。技術の強みを、お客様にとっての価値として整理し、わかりやすく伝えることは、マーケティング部が担うべき大切な役割です。だからこそ、私たちマーケティング部が橋渡し役となり、技術の価値を市場へ届けていきたいと考えています。
FUJIのマーケティング部は、事業の根幹を支える存在として、これからもお客様に新しい価値を届け続けていきます。

