
電子部品実装ロボットで世界的に知られるFUJI。その技術力を生かし、新たな挑戦として進めているのが、小売店舗向け多機能搬送ロボット「Rally」です。今回は、Rallyプロジェクトリーダーに、FUJIが小売業界に挑戦する背景や、Rallyに込めた想いについて話を聞きました。電子部品実装ロボットのソフトウェア設計で培った経験を生かしながら、現在は技術開発だけでなく事業開発まで幅広い業務を担当しています。なぜFUJIが小売業界に挑戦するのか。そして、どのような価値を提供しようとしているのか。技術と事業開発の両面から話を聞きました。
小売業界の人手不足に挑む、多機能搬送ロボット「Rally」の誕生
入社10年目で、これまで電子部品実装ロボットのソフトウェア開発に携わってきました。OSやサーボシステムなどの組込みソフトウェア開発を担当し、現在はRally事業に参画しています。趣味は登山やキャンプ、バイクで、休日は自然の中で過ごすことが多いですね。
ホームセンターやスーパーマーケットなどの小売店舗で働く方々を支援するロボットです。品出し作業で使用するカゴ台車の搬送をはじめ、販促活動や清掃、巡回など、店舗内で発生するさまざまな業務をサポートします。人手不足が深刻化する中で、これからの店舗運営に欠かせない存在になっていくと考えています。
きっかけは、スマートロッカーシステム「Quist」を展開する中で、お客様からさまざまな課題を伺ったことでした。その中でも特に多く聞かれたのが、店舗内物流の負担に関する悩みです。社内で検討を重ねる中で、この課題をロボットで解決できないかと考え、Rallyの開発がスタートしました。
実際の現場を見学すると、品出し作業では重量が数百キログラムにおよぶカゴ台車を運搬しており、早朝や閉店後の限られた時間帯に作業が集中していました。
特にスーパーマーケットでは、朝6時頃から開店前までの時間に品出しを行うケースも多く、高齢の方や女性スタッフが重いカゴ台車を扱う場面もあります。身体的な負担はもちろん、安全面でのリスクもあります。そうした現場の課題を目の当たりにし、「ロボットで支援できないだろうか」と考えたことがRally開発の出発点でした。
私たちが目指しているのは、人とロボットがそれぞれの強みを生かしながら共に働ける環境づくりです。ロボットが重労働を担うことで、スタッフの皆さんが接客や売場づくり、お客様対応といった本来注力すべき業務に集中できる環境をつくりたいと考えています。

開発だけではない。事業づくりまで担う若手リーダーの挑戦
事業開発とともに、開発リーダーとしてメカ・ハード・ソフトの各設計者を取りまとめています。また、自らも担当者としてソフトウェア開発に携わりつつ、お客様への提案活動まで行っています。事業開発なので、製品開発だけをしていれば良いわけではありません。お客様の現場でPoC(概念実証)を実施し、実際の現場でどのように活用できるかを検証しながら、改善を重ねています。
また、お客様の声を直接聞き、市場ニーズや運用上の課題を把握したうえで開発にフィードバックすることも重要な役割です。製品と事業を同時に育てていく感覚に近いですね。
確かに幅広い仕事を任せてもらっています。もちろん一人で進めているわけではなく、上司や関係部門と相談しながら進めていますが、年齢や社歴に関係なく挑戦する機会を与えてもらえることはFUJIの魅力だと思います。新しいことに挑戦したい人にとっては、とても恵まれた環境ではないでしょうか。
未知の現場でロボットを動かす――PoCで磨き上げる実用性
最も苦労したのは、小売店舗という変化の多い環境でロボットを安定して運用することです。工場では設備やレイアウトが一定に保たれていることが多い一方で、小売店舗では日々状況が変化します。バックヤードに置かれている荷物の位置が変わることもありますし、通路の状況も常に同じではありません。
さらに、店舗ごとに使用しているカゴ台車の種類やサイズも異なります。ロボットを導入するたびに新たな課題が見つかり、それを一つひとつ解決していく必要がありました。
また、Rallyは単なるロボットではありません。組込みソフトウェアだけでなく、装置を管理するバックエンドシステムや、お客様が利用するWeb画面なども含めたシステム全体を構築する必要があります。非常に幅広い技術領域が求められるため、常に新しい知識を学び続けています。
製造業と小売業の違いを強く実感したことです。製造業では決められた手順に沿って運用することが一般的ですが、小売店舗では日々の状況に応じて柔軟な対応が求められます。そのため、現場をロボットに合わせてもらうのではなく、現場に合わせてロボットや運用方法を設計する必要がありました。
PoCを通じて現場の声を聞きながら改善を繰り返してきましたが、その中で特に印象に残っているのがお客様からいただいた言葉です。導入から間もない頃、実際にご利用いただいた店舗の店長から「朝の作業が楽になった」「その後の仕事も元気に取り組めるようになった」という声をいただきました。
品出し作業では、重量が300~500kgにおよぶカゴ台車を扱うこともあり、その身体的負担は決して小さくありません。その作業をRallyが担うことで、現場の方々の負担軽減につながったことを実感できました。自分たちが開発したロボットが実際に役立ち、人の働き方を少しでも良くできていると感じられた瞬間でした。

年齢や社歴を問わず挑戦できるFUJIの風土
年齢や社歴に関係なく挑戦できることだと思います。また、さまざまな専門分野を持つエンジニアが多く在籍しており、困った時には気軽に相談できます。そうした環境があるからこそ、技術者として成長できる機会も多いと感じています。
人とロボットが共に働く未来を目指して
将来的にはスーパーマーケットやホームセンターだけでなく、さまざまな小売店や商業施設で活用される存在にしたいと考えています。ファミリーレストランの配膳ロボットのように、店舗で見かけることが当たり前の存在になれればうれしいですね。
そして、Rallyを単なる搬送ロボットではなく、店舗スタッフの一員として活躍できる存在へ進化させていきたいと考えています。人手不足が進む中でも、誰もが安心して働ける環境をつくる。そのために、人とロボットがそれぞれの強みを生かしながら共に働く未来を実現していきたいです。
